ザ・レポート!今なお残る物々交換の風情と人情。「勝本朝市」で元気に!-1

ザ・レポート!今なお残る物々交換の風情と人情。「勝本の朝市」で元気に!

勝本集落は壱岐島の北西にあり、勝本城址や朝鮮通信使迎接所跡をはじめたくさんの歴史的遺跡がある港町。鯨漁の拠点として栄え、今も鯨供養塔が残っています。

なかでも「勝本浦」と呼ばれる一帯は港と人家が一体となった、まさに “本物の漁師町”。初めて訪れても、何度訪れても、何だか懐かしい。その気分は朝市でさらに倍になると聞いて、朝7時、開店とともに行ってみました。

遠く江戸時代から!地元の産物の交換から始まった朝市

勝本浦の朝市は、江戸時代のくじら組が始まった頃に発祥し、壱岐島の他の町では見られないこの地だけの珍しい朝市です。そもそもは、農家の人が農作物を担いで人家の密集する商店街の店先の路上で販売をし、漁師の家では魚やイカなどを加工し、人の集まる朝市に持っていきました。そこでそれぞれが物々交換をし合ったことが起源とされ、今まで続いてきたとのこと。現在でも毎朝獲れたての海の幸、山の幸が商店街の路面やアーケードで売られています。
また、毎年11月の第1日曜日には「勝本朝市祭り」が開催されるそうで、島外からの観光客を含め、多くのお客さんで賑わうとか。
※朝市は毎朝7時過ぎから11時ごろまで開かれていますが、悪天候の場合は出店されていないこともあります。

Column

捕鯨で栄え、育まれたみなと文化。勝本の方言は雅(みやび)とも?

捕鯨で栄え、育まれたみなと文化。勝本の方言は雅(みやび)とも?

壱岐の近海は初冬にはオホーツク海から日本海を通って南下する「下り鯨」と、早春になると北上する「登り鯨」で賑わい、古い歌に「壱岐のわたりを見渡せば、鯨の息吹たたぬ日なし」と詠まれたほどでした。なかでも勝本浦は春秋共に断トツの捕獲量を上げて、捕鯨基地として大きな発展を遂げてきました。
今に残るお茶屋敷跡(通称 阿房塀)はその名残。日本の三大富豪と呼ばれた「土肥鯨組」の4代目土肥市兵衛が昭和4(1767)年に巨額の財貨を投じて、建てた豪邸跡です。多くの京都美人を定住させたり、大阪・京都方面にも出荷・販売していたので関西文化を取り入れていました。捕鯨の仕事のために各地の若者を雇い入れたり、鯨を求めて様々な地方から舟や人が往来したことなどから、勝本には「おおきに」など各地の言葉が入り交じり、「勝本弁」として今も残っています。

いざ!朝7時すぎに朝市へ行ってきます!

奥行き10メートルほどのアーケードの中には、両サイドに置台。だれだれさんの場所、何々商店など場所が決まっている。ここは主に海産物が中心だ。ワカメや青さ、ひじき。鯵の干物などの乾物の安いこと。この日はたまたまシイラの大きいのが一匹ドーンと。何と1,000円!安い!新鮮!さらにこんな会話のおまけ付き。「ここではカナヤマっていうんだよ。ごめんマビキともいうよ。そっちじゃシイラっていうの、へぇ。さ、イカ明太とかイカ豆板醤なんかいかがですか。3個なら1,000円でいいよ。ね、一昨日、テレビの取材が入ってね、なんていう人だったか…きれいなタレントさんが来てね。あ、こちらのお姉さんもきれいだけど。ね、このイカウニ、いらないかい?ウニもイカも新鮮だよ。よそで買うよりお安くしときます」…。

商店街では、路面に野菜や乾物、つまみ食いしたくなる自家製総菜まで

近在のお母さんたちが、「うちのシイタケ、大きいよ。このミョウガ、10個で150円でいいよ。梅干しも持ってって!」…商店街の路面には、地元の農家のお母さんがその朝採れたての農作物や、自宅で加工した漬物や乾物などを並べています。ほとんどが膝元50センチ四方にも満たない小さなお店。正直、内職感満載で、そこがいい。素朴で優しい笑顔とお安い値段に、買うというよりは分けてもらうという気分に。売れて品物が無くなったらおしまいとかで、ここでもこんな会話が。
「大体、いつも同じ人が来るよ。しばらく来ないとあの人、元気かなぁなんて安否確認の場にもなってるよ(笑)。ここに来ると、大体の人の消息がわかるんだよね」」 
中には孫を連れているおばさんも。店先におもちゃが散乱してて微笑ましい。
「嫁も働きに行ってるからさあ、子守兼ねてここに来るのよ。年代がいくと働く場がなくなるけど、生きがいだよ、ここは。88歳とか90歳の人もいるんだから」
自家栽培の麦を炒って小袋に入れて並べているおばさんは、
「一つまみヤカンに入れて沸騰させると濃い麦茶になるよ。香りがいいよ。市販の麦茶なんか飲めなくなるよ」と、セールストークも絶品!素晴らしい…。脱帽です。その元気も一緒に買った!

SNSで人気爆発?! 新鮮手作り旬のジャム。朝市に新たな風が吹く

朝市の通りでも中心的な店が下條果物店。店主は「勝本朝市まつり」の推進にも積極的に関わり、最近では壱岐産のブランドくだものを使った自家製ジャムにSNSを通じて全国から注文が。新たな勝本名物として人気を博しているとのこと。朝市の帰りにちょっとインタビュー。

Q 壱岐産のくだものなどをジャムにして販売しているそうですね?
A 勝本は壱岐でもあまり人が来ないところなので何かここだけのブランドを作りたいと考えて手作りジャムを開発し、人気急上昇中。最初は島内の人向けにしていたんですが。だんだんとSNSで広まって行ったようで、観光の方が買いに来ることが多くなりました。

Q ロゴやパッケージデザインが可愛いですね。
A  ありがとうございます。壱岐の果物は40種類くらいありまして、桃が出回るころには「桃ジャムが始まりました!」イチゴなら「イチゴジャムが出ました!」とインスタやフェイスブックなどに発信するんです。で、メッセンジャーなどで注文が来ると発送するという、それ自体はアナログ的なやり方で(笑)。数もそんなには作れないのですが、限定感がいいのかな?その現物の生があるときだけのものなので。

Q  まさに旬ですものね。希少感や限定品というところで益々、おいしくなるのでは。
A 壱岐の果物のおいしさと手作りの良さを組み合わせて、壱岐名物になったら嬉しいですね。壱岐観光と合わせて、うちのジャムをぜひ食べに来てください。

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